箚記(さつき)Vol.6

ここではどうも小説ばかりご紹介してるので、たまにはノンフィクションを。個人的にあまり仕事関係の書物は苦手で、つい違う分野に走ってしまいます。ちょっとジャンルレスで。


200509b美しくなければならない ~ 現代科学の偉大な方程式 (グレアム・ファーメロ),2003
IT MUST BE BEAUTIFUL - Great Equations of Modern Science (Graham Farmelo)

E=mc**2 に代表されるように、真理はシンプルで美しい、という事をテーマにした現代物理科学の解説書です。如何にそれらの方程式が生み出されてきたのか、という事を中心に、方程式の科学的・社会的意味とを、平易に(数学を使わずにという意味に近いですが)説明してます。挙げられているのは、プランクーアインシュタイン方程式、アインシュタイン方程式、シュレーディンガーの波動方程式、ディラック方程式、シャノンの方程式、ロジスティック写像、ゲーム理論による生命進化の方程式仮説、モリーナローランドの化学方程式、ドレイク方程式、一般相対性理論、ヤン-ミルズの方程式。

必ずしも全て、美しい方程式が並べられているわけではありませんが、量子物理学、環境問題、情報理論、カオス、光と重力から、宇宙の知的生命体の存在数まで、アインシュタインから始まる、20世紀物理科学の世界の総括とも言え、そういう意味ではとても面白い読み物でした。


...という事で、「美しい」&科学つながりで映画(DVD)もご紹介。

200509a「ビューティフル・マインド」(2001、米)
監督:Ron Howard 出演:Russell Crowe, Ed Harris, Jennifer Connelly 他

ゲーム理論を構築しナッシュ均衡という概念を生み出した、ジョン・ナッシュ。彼の大学時代の孤独と栄光、そして暗号解読という形で軍事利用されていく事への苦悩と精神崩壊、天才が故の自己分裂は乗り越えられるのか。

暗号・数学といった映像にしがたい分野のビジュアルが面白かった。でも、あまり数学数学してないで、きちんとした人間ドラマになっていて、心に残ります。


...ついでに、「美しい」&数学つながりで、漫画もご紹介。

200509c「Q.E.D. 証明終了」 (加藤元浩)
数学の要素が入った、推理ミステリー漫画です。ほぼ1話完結。現在~22巻。

(設定)
MIT を15歳で卒業した、燈馬 想(TOMA SO)は、日本の高校に編入。クラスメートの行動派、水原可奈と共にいろんな事件に首を突っ込んでは、燈馬君の明晰頭脳により証明終了=解決していく。

MITでの専攻は数学。数学的な理論の積み上げで事件を解決していくのですが、理屈と人間の心、その対比が面白いです。いろんな数学知識も得られます。デデキントの切断とか、オイラーの方程式とか、この漫画で覚えました。

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箚記(さつき)Vol.5

今回は、長年読み続けてる本を紹介します。

img_38302_8663458_0グインサーガ 103巻 ヤーンの朝 (栗本薫)

グインを捜し求める、ヴァレリウスとケイロニアの捜索団。山火事の様子が気になるヴァレリウスは一人捜索に向かう。そこでは、魔道師同士の壮絶な戦いが始まっていた。

いやいや、トールたちがどうするかは別として、とりあえず落ち着きましたね、この数巻の騒動は。


・・・と、知らない方へ話してもなんなのでストーリーを載せようと思うのですが、何せ100巻以上同じ物語が続いていると一言では言い表せません。かなりの部分が端折られますが、ご勘弁下さい。

(ざっくりストーリー)
モンゴール-パロ戦役で、パロ陥落の際聖王家の秘密の古代装置によって難を逃れた、聖双生児リンダとレムスは、森の中で謎の豹頭戦士グインと出会う。記憶を失い、自分が何者かなぜ豹頭なのか、という悩みを抱えながらも、リンダとレムスに従って、途中イシュトバーンという若き戦士を加えながら、モンゴールの手から逃れパロの友好国まで送り届ける。

パロ聖王に即位したレムスは、王家の一員であるアルド・ナリスの協力も得て、パロを奪還する。パロの平和は取り戻されたが、若き聖王レムスは、若き王としての孤独に悩まされる。

一方、イシュトバーンと共に旅を続けたグインは、ケイロニア皇国にて傭兵として暮らし始める。ケイロニア内乱の影の解決者、反乱者の討伐、皇女シルヴィア誘拐のキタイからの奪還など次々と手柄を上げていったグインは、シルヴィアと結婚しケイロニア王となる。

ケイロニアでグインと分かれたイシュトバーンは、赤い街道の盗賊として名をはせるが、先のモンゴール-パロ戦役で捕囚となっていたモンゴール皇女アムネリスを脱出させ、モンゴールの将として、ユラニア・クムを力で制覇し、またアムネリスと結婚し、この3国=ゴーラの僭王となる。しかしかつての聖双生児の脱出加担の際のモンゴールへの敵対行為が発覚し、モンゴールをゴーラの力で制圧し、事実上モンゴールを崩壊させる。

パロの聖王レムスは、先のモンゴールからの逃亡の際、キタイの僧の亡霊に取り憑かれていた。竜頭のキタイ王ヤンダル・ゾックに次第に裏から支配されていくパロ。そして異世界からの精神生命アモンを生み出してしまう。パロがキタイの手に落ちていく事を憂いたアルド・ナリスは妻リンダと共に内乱をおこし、神聖パロ王国を宣言する。またキタイの実態を見てきたグイン豹頭王もまた、真の危機に気づき、パロ内乱に加担する。一方イシュトバーンも参戦。混乱する戦局の中、アルドナリスは命を落とすがグインが古代装置にてアモンをパロから引き剥がし、パロは元の姿にもどる。一方アモンと共に星船に乗り込んだグインは、自分を戻し、船を自爆させるよう命じた。しかしグインはまた記憶を失ってしまう。

という事で、記憶を失ったままの英雄豹頭王グインは、出会ってしまったイシュトバーンの手から逃れ、微かに記憶に残ったリンダという名前を頼りにパロに向かおうとしています。


という事で、まあ壮大な3国史という感じです。大体上の1段が20巻ずつ位の感じですね。物語の中では概ね10年くらいが経過してます。途中ほぼ端折らずに! あ、それとサブストーリーとして外伝がこれまた20巻ほどあるし、途中途中で解説本(というか状況整理=登場人物辞書とか)があるので、都合130巻位になっているのでは。ここまで来ると、読んでみてくださいとは気軽に言えませんが、何年何十年とはまっている人が(自分も含め)いる、というのは事実なので、興味があればお仲間にお入り下さい。


ちなみに、最初のところでの、ヴァレリウスというのはパロの魔道師宰相だったのですが、アルドナリスについてアモン後も女王リンダの元で宰相をやってます。トールというのはグインの傭兵時代からの仲間で、いまや軍の総責任者に近い立場。今回の捜索団のリーダです。

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箚記(さつき)Vol.4

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ちょっと前の小説ですが・・・ダヴィンチコードを越える薀蓄っていうのに誘われ。

「レックス・ムンディ」 (荒俣 宏)
古代遺跡を求めレイハンターとして生きる青山、彼は謎の宗教団体からの依頼でかつて彼自信が破壊封印したレンヌ=ル=シャトーの遺跡へ戻ってゆく。未知の病原体が守る石棺の奥にあるのは、救世主なのか悪魔なのか。

下記で紹介する2つを読んでいたので、わりあいすんなり読めました。薀蓄はたっぷり。でも物語としてはダヴィンチコードに、知識量としてはフーコーの振り子に分があるかなあ。


という事で、テーマとして近い2つの作品をご紹介します。3作品読み比べてみると結構楽しめるかも。キーワードは、聖杯伝説、テンプル騎士団、マグダラのマリア、フリーメーソン、といったところかな?

「ダヴィンチ・コード」(ダン・ブラウン)
ちょっと前に流行ったので覚えている人も多いのでは? 物語としてとても面白くて、どんどん読み進んでしまいます。ヨーロッパではダヴィンチコードツアーはやってるらしいですね。
「フーコーの振り子」(ウンベルト・エーコ)
昔映画にもなった「薔薇の名前」を書いた人です(映画はショーンコネリーが出てました)。とーっても難解(訳者に拍手)というか前提知識(知識人の常識)が必要ですが(例えば、ジプシーの都市論とかスキタイ民族における車輌の発展(だったっけ?)というのがナンセンスなジョークであることが分かって笑える人でないと辛いかも)、ある意味知識欲が出てきます。
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箚記(さつき)Vol.3

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フェスト中、移動とか空き時間を使っての読書タイムがありました。さすがに1日中聴くのは疲れたので。

「変身」 (東野圭吾) ※イメージなし
病院で目覚めた成瀬純一。世界初の脳移植手術により一命をとりとめ順調に回復していくが、かつての自分の性格や好みから徐々に変化が訪れる。自分の変身にとまどう純一は・・・

後半ちょっと止まらなくなって、途中から一気読みしました。脳移植ってやっぱり機能が同じでも、中身が消去されてないHDに交換するようなものだと理解するのだけど、何%まで同じならもとの情報が保たれているというのか、というのを、つまりどこまでが元の人で、どこからが脳提供者なのか、提供者は死んでるのか生きているのか、そういう事をやっぱり考えされられます。

という事で、東野圭吾さんお気に入りなのですが、My Best 3冊ご紹介 (全ての作品を読んだわけではありませんが・・・)
「秘密」  これは映画にもなりましたが(見てないけど)最後の最後ほんとどきどきします。
「白夜行」 主人公が一言も話さないのに、色が積み重ねられていって形が出来上がってくる不思議な小説
「悪意」  殺人事件の犯人はすぐ判明したが・・・動機はいったいなんだったのか・・・最後の謎解きがとても面白いです
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箚記(さつき)Vol.2

恩田陸さんその2です。

200507c「六番目の小夜子」
とある高校で語り継がれる「小夜子」の伝説と密かに受け継がれている3年に1度の「小夜子」年の実行シナリオ。選ばれた「小夜子」には鍵が渡され、「小夜子」を演じる意思を始業式の朝に、特別な花瓶と赤い花で宣言する。六番目の「小夜子」の年、「小夜子」が始業式の早朝花を持っていくと、既に花瓶には赤い花が飾られていた・・・

学校や会社という1つの社会共同体の空間の広さ/狭さみたいなものとその中から生まれる独自の文化や伝説、共同体の中で事件やイベントがおき共通体験となり伝説となって文化となる、そんな事を漠然と感じました。文化祭の全校生によるトランス状態なんか特に。ただ、エンディングが爽やかな感じなのに、なんかいろんな事が中途半端に終わってしまった感じでちょっと個人的にいま一つでしたね。

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「光の帝国―常野物語」
温和で知的な、常野の人々。特殊な能力を持つ彼ら一族は、「常に野に」在る存在として歴史の時代から一般社会に紛れながら生活しているが・・・ 異なる主人公による10の短編集です。

独立した短編の集ですが、一族という繋がりと登場人物が微妙に絡み合い、さらに歴史・時代のつながりがあって、時空というものを感じました。一族というテーマをモチーフにした穏やかで優しいパッサカリアという感じ。個人的にとても面白かった作品です。実は最初は何かの漫画(多分週刊誌の読みきりだったと思うのですが)で読んで(「大きな引き出し」の内容でした)、なんとなく記憶に残っていたので、小説として存在していたという事と恩田陸さんの作品だった、という事でちょっと再発見の喜びを感じてます。続編が出てるようなので(蒲公英草紙―常野物語)また読んでみようかと思います。

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箚記(さつき)Vol.1

箚記(さつき、さっき)は、読書して得た知識・感想を書き記すこと、また書き記したものを指すようですね。いいタイトルないかなと探してて発見したので、早速使ってみました。

~閑話休題~

最近、恩田陸さん(あったこともない人をさん付けするのもどうかと思ったりもしますが、一応敬意を込めて)の小説にはまり始めてます。といっても、まだ「夜のピクニック」にも「ユージニア」にも手がついていないのですが・・・

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「三月は深き紅の淵を」
噂の中に存在する本の所在を謎のメッセージから捜し求める、噂の本の作者を探して旅に出る、2人の女子高生の死の真相に見え隠れする2人の意外な関係、回転木馬というテーマから小説を書き始める推敲の過程、という4つの別々な短編の集ですが、通奏低音のように「三月は深き紅の淵を」という、1晩だけしか読んではいけないという本が見え隠れします。

大抵のものは買って手元に置いておく事ができる今の世の中、1度だけしか読めない本や1度しか見れない映画、しかも淡々としているのに後に残る作品、それはどんな感覚を残し、時間とともにどう変化するのだろう? リアルと人間の記憶と期待感と想像力、その間の不思議な関係を思いました。変な例だけど、自分の演奏の録音を聞いたとき、1回目は落胆し、2回目はそれでもいいところもあった、と持ち直し、3回目位から落ち着いて聴ける、というような事ってありませんか?

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「麦の海に沈む果実」
「3月の王国」と呼ばれる特殊な学園に、2月の末に転入した理瀬。なぜ自分は特別なのかと訝しみながらも徐々に学校生活に慣れていくが、彼女の周りで次々と事件は起きていく。長編学園もの。「三月は深き紅の淵を」と、特に4つめの話と交差するストーリーです。

うーん。展開と謎解きは面白いので飽きずに読めるのだけど・・・「小夜子」と一緒で10月から2月までが何もなく進んでなんとなく終わってしまって、個人的に不完全燃焼感あり。好みの問題なのだと思うのですが。

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